『再会の誤解』
目が合ったはずなのに、金髪の青年は何も言わずすれ違った。
無視されたと思って、彼女の頭に血が上った。大人気無く追いかけて、前に立ちはだかる。
彼の視線が疑問を含んだ。
――何してるんだろう、あたし。
「こんにちは!」
「……こんにちは」
――何言ってるんだろう、あたし。
一瞬きょとんとして、それから答えを返した彼を見て、やっと彼女は気づいた。
どう見ても別人だった。最初にどうして気づかなかったのか。
ここにいる青年は、ウェットではなかった。
そして、こんな風におどおどとはしていなかった。
――手のつけられないバカだ、あたしは。
「すみません、エルアステインさんの……?」
精一杯失礼にならないように、切り出してみる。
「ああ、ヴィサリオンのお知り合いですか」
彼は何となく納得してくれたようだった。
よく間違えられるんだろうか、こういう事に慣れているみたいだった。
「あの、初めまして。僕、ヴィサリオンの双子の弟で、ヴィスティと言います」
「初めまして。ごめんなさい。あたしはロベルタと言います。九条ロベルタ光。
お兄さんにはお仕事で大変お世話になりました」
彼は素直に謝罪の言葉を受け入れてくれ、おまけにお茶まで御馳走してくれた。
この場にいない彼の兄の近況を聞きながら、彼女はつい、まるで違う事を考えていた。
――見た目は似てるのに、中身は全然違うんだ。どうしよう、選べないや。
「……なんですよね、うちじゃあ。――ロベルタさんのところではどうですか?」
「え、え? えーと……」
あなたの顔に見とれて話を聞いていませんでした、とは流石に言えなかった。
Cast
彼女
九条ロベルタ光(カリスマ、マネキン●、トーキー◎)
青年
ヴィスティ(タタラ●、ハイランダー、ニューロ◎)
青年の兄*1
ヴィサリオン・エルアステイン(バサラ、フェイト=フェイト◎●)
Author
松江あきら