『再会の誤解』

目が合ったはずなのに、金髪の青年は何も言わずすれ違った。
無視されたと思って、彼女の頭に血が上った。大人気無く追いかけて、前に立ちはだかる。
彼の視線が疑問を含んだ。
――何してるんだろう、あたし。
「こんにちは!」
「……こんにちは」
――何言ってるんだろう、あたし。
一瞬きょとんとして、それから答えを返した彼を見て、やっと彼女は気づいた。
どう見ても別人だった。最初にどうして気づかなかったのか。
ここにいる青年は、ウェットではなかった。
そして、こんな風におどおどとはしていなかった。
――手のつけられないバカだ、あたしは。
「すみません、エルアステインさんの……?」
精一杯失礼にならないように、切り出してみる。
「ああ、ヴィサリオンのお知り合いですか」
彼は何となく納得してくれたようだった。
よく間違えられるんだろうか、こういう事に慣れているみたいだった。
「あの、初めまして。僕、ヴィサリオンの双子の弟で、ヴィスティと言います」
「初めまして。ごめんなさい。あたしはロベルタと言います。九条ロベルタ光。
 お兄さんにはお仕事で大変お世話になりました」
彼は素直に謝罪の言葉を受け入れてくれ、おまけにお茶まで御馳走してくれた。
この場にいない彼の兄の近況を聞きながら、彼女はつい、まるで違う事を考えていた。
――見た目は似てるのに、中身は全然違うんだ。どうしよう、選べないや。
「……なんですよね、うちじゃあ。――ロベルタさんのところではどうですか?」
「え、え? えーと……」
あなたの顔に見とれて話を聞いていませんでした、とは流石に言えなかった。

Cast

彼女

九条ロベルタ光(カリスマ、マネキン●、トーキー◎)

青年

ヴィスティ(タタラ●、ハイランダー、ニューロ◎)

青年の兄*1

ヴィサリオン・エルアステイン(バサラ、フェイト=フェイト◎●)

Author

松江あきら

解説

妄想10分。執筆20分程度。ヴィスティのPL、アトル氏事後承諾済。
ヴィスティは本来もっと人見知りだが、ロベルタの特技*2によって態度が緩和した。

『ネヴァーランド動乱』(06/07/16)の前に執筆。
ロベルタは双子とそれぞれ共演し、両方に【感情】のアクトコネを渡したことになる*3

*1:登場しない

*2:〈交渉〉〈一期一会〉〈インタビュー〉

*3:前回は『託された言葉』(04/08/22)