『Street Fighters』

二人が最初に会ったのはスラム街、バイパーズストリートだった。
啓一は五人抜きの真っ最中、疾風は挑戦者だった。
試合はひたすら避けて的確に打撃を繰り出す疾風ペースで進んだ。
だが、最後に啓一のカウンターがヒットした。
ぼろぼろになった啓一にほぼ無傷の疾風が負けた。
啓一はその後十人抜きを成し遂げた。一番苦戦したのは疾風にだった。


次に会ったのはアサクサの飯屋だった。
月に一度のサービスデイに、二人ともお代わり自由目当てで来ていた。
混み合う店内で相席になって、最初はお互い何も言わなかった。
それぞれ店員にお代わりを頼んでいるうちに、途中から競争になった。
結果は引き分けだった。より正確に言うと在庫切れで試合中止。
しかも食べた量では二人とも別の客に負けていた。


それから何となく親しくなった。
年が近いこともあったかも知れない。どこか境遇が似ていたことも。
軽い身の上話。食事。武術の話。食事。ストリートの噂話。食事。たまに酒。
お互い練習のつもりで始めて、真剣に殴り合ったこともあった。
ただし最後まで奥の手は見せなかった。少なくとも疾風はそうだった。
きっと啓一もそうだったと思う。武術家なんて大抵そんなものだ。


一番良く出会うのはバイパーズストリートだった。
そこのファイトマネーだけで食っていけたら楽なんだが、と笑い合った。
お互いやばい仕事で暮らしているのを知り、互いに忠告した。
啓一は疾風の格闘センスを惜しんだ。裏で終わらせるのはもったいない。
疾風は啓一を心配する相手のことを指摘した。お前が死んだらどうなるんだ。
二人とも苦笑いで話は終わった。他に生きていく方法はないのだから。


Cast
 疾風
Guest
 宇津木啓一


Author
 松江あきら
14:09 05/02/25