『冷たい雨』
夜、ストリートの片隅で冷たい雨が降っていた。
街頭DAKから流れる酸性雨注意報を尻目に、傘を忘れた勤め人が家路を急ぐ。
雨水が流れこむ排水溝から異臭が立ち上るのは、化学反応を起こしているのだろうか。
夜、ストリートの片隅で少年が倒れていた。
彼はまだ生きていたが、一人で立ち上がる体力はなかった。
無人のゴミ捨て場だけが行く宛のない少年を優しく迎え入れてくれた。
そのまま夜が開ければ、廃品処理業者(ハイエナ)が死体を回収しただろう。
万が一少年が朝まで生きられたとしても、似たような結果に終わっていたはずだ。
だが、彼がその路地で朝を迎えることはなかった。
少年には、ゆっくりと体が冷えていくのがわかっていた。
ああ、多分何もできないままここで死ぬのだろう。
自分がゴミ捨て場にいることが、ひどく当たり前のような気がした。
『ある殺し屋の記録』
×月○日 夕方から雨
バーのカウンターで久しぶりにタカシナに会った。何年ぶりか。「おにいちゃん」はよせ。
探偵になったとか言っていたが、どうせ口八丁だけで何とかしているのだろう。
ボックスにツヅキがいたが見ない振りをした。奴は女連れだった。
カーロスは探偵としてのタカシナと付き合いがあるらしい。この街は狭い。
それにしてもカーロスが芸風を変えていたのは笑えた。キースでも感染ったのか。
ガキを拾うなんて随分とありふれた話だ。とりあえずタカシナも仕事に有りついたようだ。
俺もそろそろ仕事をしよう。改良したやり方も試してみたい。
その後タカムラと非直接的接触。あの方法ならこちらを呼び出す必要はないだろうに。
取り分がこれ以上減るのは我慢できないので受けることにする。
生死不問は話半分に聞いておく。前金もない依頼。ろくに期待されていないらしい。
『Street Fighters』
二人が最初に会ったのはスラム街、バイパーズストリートだった。
啓一は五人抜きの真っ最中、疾風は挑戦者だった。
試合はひたすら避けて的確に打撃を繰り出す疾風ペースで進んだ。
だが、最後に啓一のカウンターがヒットした。
ぼろぼろになった啓一にほぼ無傷の疾風が負けた。
啓一はその後十人抜きを成し遂げた。一番苦戦したのは疾風にだった。